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空き家活用

所有者不明の空き家への対応|相続人調査と特定空家の流れ

近隣にある空き家の所有者が分からず、雑草の繁茂、建物の倒壊リスク、害獣の発生に困っているという相談は、全国の自治体に多く寄せられています。所有者が不明の空き家は2018年の総務省調査で全国に約20万件存在し、相続が複雑化したり、所有者が亡くなって相続登記が放置されている事例が大半です。

所有者不明の空き家への対応は、誰が困っているか(近隣住民か行政か)、空き家の状態(管理不全か倒壊リスクありか)、目的(撤去したいか活用したいか)で道筋が変わります。法的な手続きを伴うため時間も費用もかかりますが、近年は所有者不明土地の利用円滑化制度や相続登記の義務化など、対応の手段が広がってきました。

この記事では、所有者不明の空き家にどう向き合うかを、近隣住民の立場、自治体の役割、所有者を探す方法、活用や撤去のための制度の順に整理します。空き家全般の対応については空き家を相続したらまずやること、相続登記の手続きは空き家の相続登記で解説しています。

所有者不明の空き家とは何か

「所有者不明」と一言でいっても、状況にはいくつかのパターンがあります。対応方法を選ぶには、まずどの状態かを整理する必要があります。

登記名義人が亡くなったまま

空き家の登記名義が、すでに亡くなった人の名前のままになっているケースです。相続人が複数いる場合、相続登記が完了するまで法定相続分で全員が共有しています。相続登記が義務化される2024年4月以前は、相続登記しないまま放置するケースが多く、所有者が把握しづらい状態でした。

このパターンは戸籍を辿れば相続人を特定できます。法務局で戸籍を取り寄せ、相続人を順に確認していけば、現在の所有者にたどり着けるケースが多くなっています。

所有者の連絡先が分からない

登記上の所有者は分かっているものの、住民票の住所も古く、現在の連絡先が不明なケースです。所有者が転居を繰り返している、海外に移住している、住所変更登記をしていないといった事情があります。

住民票の除票や戸籍の附票で過去の住所を辿れば、現住所が判明するケースもありますが、交付請求には正当な理由が必要です。自治体や弁護士・司法書士を通じて手続きを進める方法が一般的です。

法人所有で実態がない

空き家が法人名義で、その法人が休眠状態または解散しているケースです。登記簿の本店所在地が架空だったり、清算人がいなかったりすると、対応窓口がない状況になります。

法人登記を辿って役員や清算人を特定する作業が必要で、調査には時間と費用がかかります。最終的には法務局に対して清算人選任の申し立てを行う方法もあります。

完全に所有者を特定できない

戸籍や法人登記をすべて辿っても、相続人や関係者が全員亡くなっていたり所在不明だったりして、誰が所有者か特定できないケースです。所有者不明土地の利用円滑化等に関する特別措置法など、近年整備された制度を使う対応が必要になります。

近隣住民が取れる対応

近所の空き家で困っている場合、まず取るべき行動は自治体への相談です。個人で所有者を特定するのは難しく、強引な対応は逆にトラブルの種になります。

ステップ1:自治体の空き家対策窓口に相談する

ほとんどの自治体には空き家対策の担当窓口(住宅課・建築指導課など)があります。困っている内容(雑草・倒壊リスク・害獣・不法投棄など)を伝え、対応を相談します。自治体は所有者の調査権限を持っており、住民票や戸籍を確認して連絡を取れる場合があります。

相談の際は具体的な情報があると対応がスムーズです。空き家の住所、現在の状態の写真、いつから空き家になっているか、自分が困っている内容(健康被害・通行妨害・防犯不安など)を整理して伝えます。

ステップ2:特定空家・管理不全空家として指定してもらう

「空家等対策の推進に関する特別措置法(空家特措法)」では、特に問題のある空き家を「特定空家」、その前段階を「管理不全空家」として指定する仕組みがあります。指定の基準は以下の通りです。

区分状態の目安自治体ができること
管理不全空家このまま放置すれば特定空家になるおそれ助言・指導
特定空家倒壊の危険・著しく衛生上有害・景観を損なう・管理不適切助言・指導・勧告・命令・代執行

特定空家に指定された場合、所有者には改善命令が出され、従わなければ自治体による行政代執行(撤去や除草を行政が行い費用を所有者に請求する)が可能になります。さらに、固定資産税の住宅用地特例(最大1/6)が外れて土地の固定資産税が大幅に上がるため、所有者にとって放置のコストが上昇します。

特定空家・管理不全空家の指定基準と効果は空き家の固定資産税が6倍になる条件で詳しく解説しています。

ステップ3:警察・消防に相談する(緊急時)

倒壊が差し迫っている、火災発生のリスクが高い、不審者の出入りがあるといった緊急の状況では、警察や消防にも相談します。建物が倒壊して通行人にケガをさせる危険がある場合は、所有者がいなくても自治体が緊急的な措置を取れる場合があります。

ステップ4:民法上の請求

近隣住民の立場でも、被害を受けている場合は民法上の請求が可能です。建物の一部が自分の敷地に越境している、倒壊で被害を受けたなど具体的な損害がある場合、損害賠償請求や妨害排除請求の対象になります。

ただし、所有者を特定して訴訟するには時間と費用がかかります。「不在者財産管理人」「相続財産管理人」を裁判所に選任してもらい、その管理人を相手に請求する方法もありますが、選任費用(20万〜100万円程度)を申立人が予納する必要があり、最終的に空き家の財産から回収できないと自己負担になるリスクがあります。

自分が相続人かもしれない場合

「亡くなった親族の家らしい」「自分が相続人の可能性がある」と気づいた場合、所有者不明のまま放置する前に、相続人としての対応を検討します。

戸籍で相続関係を確認する

被相続人の出生から死亡までの戸籍をすべて取り寄せ、自分の立場を確認します。直系の相続人(配偶者・子・孫)であれば優先的に相続人になり、子も孫もいない場合は親、親もいない場合は兄弟姉妹、と順に範囲が広がります。

被相続人が死亡してから10年・20年経過していると、相続人がさらに亡くなって数次相続が発生し、相続人が10人を超えるケースもあります。戸籍の収集と相続人特定には司法書士・行政書士に依頼するのが現実的です。

相続放棄の選択肢

空き家が老朽化していて売却も難しい、解体費用だけが残るような状況であれば、相続放棄を検討します。相続放棄は「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」に家庭裁判所に申述します。

相続放棄をすると、その不動産は次順位の相続人に移ります。全員が相続放棄すると、最終的に相続人不存在の状態になり、相続財産清算人(2023年4月の改正で「相続財産管理人」から名称変更)が選任されて、債権者への弁済や国庫帰属の手続きが進められます。

相続土地国庫帰属制度

2023年4月から始まった「相続土地国庫帰属制度」では、相続した土地を一定の条件のもとで国に帰属させる手続きが可能になりました。建物がある土地は対象外のため、空き家の場合は解体して更地にしてから申請します。

承認を受けるには、境界が明確であること、抵当権などの担保権がついていないこと、土壌汚染がないことなどの条件を満たす必要があります。承認されると10年分の管理費相当額(20万円程度から)を負担金として納付して国に帰属させられます。

詳しくは空き家を相続したらまずやることで初動対応の流れを整理しているので参考にしてください。

所有者を探す方法

近隣住民や自治体ではなく、自分が活用や購入のために空き家の所有者を探す場合、以下の方法があります。

法務局で登記簿を取得する

不動産の所在地が分かれば、法務局で登記事項証明書を誰でも取得できます。登記事項証明書には所有者の氏名と住所が記載されています(住所は登記時のもの)。手数料は窓口600円、オンライン申請480円で取得できます。

戸籍の附票・住民票で住所を辿る

登記上の所有者の住所が古い場合、住民票の除票や戸籍の附票で過去の住所変遷を辿れる場合があります。ただし、第三者が交付請求するには正当な理由(不動産の購入・賃貸・債権回収など)が必要で、弁護士・司法書士を通じて職務上請求する方法が一般的です。

司法書士・弁護士に依頼する

戸籍の収集・住所追跡・相続人特定は専門知識が必要なため、司法書士・弁護士に依頼するのが現実的です。費用は事案の複雑さで変わりますが、相続人特定で5万〜30万円が目安です。所有者と連絡が取れるようになれば、売買や賃貸の交渉に進めます。

不動産会社を介して所有者にアプローチする

地元の不動産会社が、空き家の所有者と既に接点を持っているケースがあります。「この家を購入したい・借りたい」と相談すると、所有者に意向を確認してくれる場合があります。買取業者であれば、所有者特定から買取交渉までを一括で代行することもあります。

空き家の取り扱い経験が豊富な専門会社に相談すると、所有者調査から売買・解体まで対応してもらえます。

所有者不明土地の利用円滑化制度

所有者がどうしても特定できない、または特定できても連絡が取れない不動産の活用・処分を進めるため、近年は法整備が進んでいます。

所有者不明土地の利用円滑化等に関する特別措置法

2018年に制定された制度で、所有者不明の土地を一定の公益目的(地域住民の利益増進)で利用したい場合、都道府県知事の裁定により最長10年間の利用権を取得できます。地域の駐車場・公園・直売所などとして活用するケースで使われます。

不動産登記法の改正(相続登記の義務化)

2024年4月から、相続による所有権移転登記が義務化されました。相続を知った日から3年以内に相続登記を申請しないと、10万円以下の過料の対象になります。これは所有者不明不動産を減らすための制度で、施行前から相続している不動産にも適用されます。

義務化により、今後は所有者不明の不動産が減ることが期待されています。一方で、相続放棄や数次相続によって所有関係が複雑な不動産は引き続き存在するため、調査の負担はゼロにはなりません。

不在者財産管理人・相続財産清算人

所有者が行方不明の場合は「不在者財産管理人」、所有者が死亡して相続人が誰もいない(または全員放棄)場合は「相続財産清算人」を、家庭裁判所に選任してもらう制度があります。選任された管理人・清算人を相手に売買契約を結んだり、撤去を要求したりできます。

申立費用は数万円程度ですが、管理人・清算人の報酬として20万〜100万円程度の予納金が必要です。空き家の財産から回収できれば自己負担なしで済みますが、財産価値が低い場合は申立人が負担するリスクがあります。

活用や撤去を進めるための選択肢

所有者を特定できれば、購入・賃貸・撤去のいずれかの方向で交渉を進めます。

購入を検討する

所有者と直接交渉して購入する方法です。固定資産税の負担を手放したい所有者にとっては、安価での売却に応じる場合があります。買取業者を介すると、相場より低めの価格になりますが、面倒な交渉や登記手続きを任せられます。詳しくは空き家買取の流れと注意点で解説しています。

賃貸での借用を提案する

購入が難しい場合は、賃貸契約で借りる方法もあります。所有者にとっては手放さずに収入が入る、借主にとっては低コストで利用できる、双方にメリットがある選択肢です。

解体を所有者に提案する

倒壊リスクや景観の問題があり、活用の見込みがない空き家は、所有者に解体を提案する方法もあります。自治体の解体補助金が使える場合もあるため、事前に情報を整理して所有者に伝えると交渉が進みやすくなります。詳しくは空き家解体補助金の調べ方と申請手順で整理しています。

空き家は売却と解体どちらが得?で売却と解体の費用比較を整理しているので、所有者と話し合う際の参考にしてください。

所有者不明の空き家への対応は、調査・交渉・登記など専門的な手続きが多くなります。空き家解決の無料相談サービスで複数の専門家から提案を受けると、自分の状況に合った進め方を判断しやすくなります。

よくある質問

近所の空き家の所有者を、自分で調べることはできますか。

法務局で登記事項証明書を取得すれば、登記上の所有者の氏名と住所が確認できます(誰でも取得可能、手数料600円)。ただし、その住所が古くなっていたり、所有者が亡くなっていたりすると、現在の連絡先までは個人で辿るのが難しくなります。住民票の除票・戸籍の附票は第三者が取得するのに正当な理由が必要なため、司法書士や弁護士を通じる方法が現実的です。

特定空家に指定されると、所有者にはどんな影響がありますか。

自治体から助言・指導・勧告・命令と段階的な改善要求が出されます。命令に従わない場合、行政代執行で撤去や除草が行われ、費用は所有者に請求されます。さらに、勧告を受けた段階で固定資産税の住宅用地特例(最大1/6軽減)が外れ、土地の固定資産税が3〜6倍に上昇します。所有者にとっては放置のコストが大きく増えるため、行動を促す効果があります。

相続人ですが、面識のない遠縁の親族の家を相続してしまいました。どうすればよいですか。

「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」であれば、家庭裁判所に相続放棄の申述ができます。3か月を過ぎていても、相続財産の存在を知った時点を起算日と主張できる場合があります。司法書士または弁護士に相談し、相続放棄の可否と他の選択肢(売却・解体・国庫帰属)を含めて検討してください。

所有者不明の空き家を購入できる制度はありますか。

「所有者不明土地の利用円滑化等に関する特別措置法」では、地域住民の利益増進を目的とした利用権の取得が可能です(最長10年)。所有権の取得には、不在者財産管理人・相続財産清算人を裁判所に選任してもらい、管理人・清算人と売買契約を結ぶ方法があります。予納金として20万〜100万円程度が必要で、手続きも複雑なため、専門家への相談が前提になります。

2024年から相続登記が義務化されたと聞きました。どんな影響がありますか。

相続を知った日から3年以内に相続登記を申請しないと、10万円以下の過料の対象になります。施行前(2024年4月より前)から相続していた不動産も、施行から3年以内(2027年3月末まで)に登記する必要があります。義務化により今後は所有者不明不動産が減ると期待されますが、過去の数次相続案件は引き続き複雑なため、早めの対応が望ましいです。

まとめ

所有者不明の空き家への対応は、状況の整理と適切な窓口への相談から始まります。

所有者不明の空き家は、対応に時間と費用がかかる一方で、放置するほど状況が複雑化します。早めに専門家へ相談し、自分の立場と取れる選択肢を整理することが解決の近道です。

出典

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