執筆: 家づくりナビ編集部
編集・確認: 株式会社ローカルマーケティングパートナーズ (最終確認: )
空き家は売却と解体どちらが得?費用・税金・スケジュールの比較
相続した空き家の処分を考え始めたとき、最初に突き当たるのが「建物を残して売るか、解体して更地にしてから売るか」という選択です。どちらが得かは、建物の状態、土地の需要、解体費、税金、使える特例、売却までにかけられる時間によって変わるため、一概には決められません。
この記事では、空き家の売却と解体それぞれの費用、税金、スケジュール、メリットとデメリットを並べて比較し、自分の状況に合った判断を進めるための整理をします。売却の方法と流れは空き家売却の方法と流れで、解体費用の相場は空き家の解体費用でそれぞれ詳しく解説しています。
古家付き売却と更地売却の違い
空き家を売却する方法は、大きく分けて「古家付き(現状のまま)で売る」と「解体して更地にして売る」の2つです。それぞれの特徴を比較します。
| 項目 | 古家付き売却 | 更地売却 |
|---|---|---|
| 売主の初期費用 | 低い(解体費不要) | 高い(解体費100万〜300万円) |
| 買主の層 | リフォーム・建て替え前提の購入者 | 土地を探している購入者 |
| 売却価格 | 建物の状態による(減額交渉されやすい) | 土地の実勢価格に近い |
| 販売期間 | 建物状態が悪いと長引きやすい | 土地需要がある地域なら早い |
| 契約不適合責任 | 建物の不具合説明が必要 | 建物は関係しない |
| 固定資産税 | 住宅用地の軽減あり(更地比で最大1/6) | 軽減なし(税額が増える) |
古家付き売却は、売主が解体費を負担しなくてよい点が最大の利点です。買主がリノベーションや建て替えを前提に購入する場合、建物の状態は二次的な問題になります。一方で、雨漏り、シロアリ、傾き、境界の未確定といった不具合は告知義務の対象であり、説明不足があると後から責任を問われるリスクがあります。
更地売却は、土地として分かりやすいため、住宅用地を探している層に見てもらいやすくなります。ただし、解体費は先に売主が負担する必要があり、木造2階建て30坪で100万〜150万円、鉄骨造やRC造ではさらに上がります。解体費を売却価格に上乗せできる保証はないため、手残りの計算を事前に行う必要があります。
費用の比較
売却と解体の費用を項目別に並べます。以下は木造2階建て30坪程度の空き家を想定した一般的な目安です。
| 費用項目 | 古家付き売却 | 更地売却 |
|---|---|---|
| 解体費 | なし | 100万〜200万円 |
| 残置物処分 | 10万〜50万円 | 解体前に処分(10万〜50万円) |
| 測量費 | 30万〜80万円(境界未確定の場合) | 同左 |
| 仲介手数料 | 売買価格の3%+6万円+税 | 同左 |
| 登記費用 | 数万円(抵当権抹消等) | 同左+建物滅失登記(数万円) |
| 所得税・住民税 | 譲渡所得に対して課税 | 同左 |
古家付きで売却する場合、買主が解体を前提にしていると、売却価格から解体費相当額を値引き交渉されることがあります。その場合、手残りの観点では自分で解体して更地にした場合と大差がなくなるケースもあります。
更地にする場合の解体費用は、建物の構造、延床面積、前面道路の幅、アスベスト含有の有無で変動します。詳細は空き家の解体費用を参照してください。自治体によっては解体費用への補助制度がある場合もあり、空き家解体補助金の調べ方と申請手順で調べ方を整理しています。
税金の比較
空き家の売却に関わる税金で、売却方法によって違いが出るのは主に「固定資産税」と「譲渡所得税」です。
固定資産税への影響
住宅が建っている土地は「住宅用地の特例」により、固定資産税が最大で更地の1/6に軽減されています。建物を解体して更地にすると、この軽減措置がなくなり、翌年から固定資産税が上がります。
たとえば、住宅用地の軽減で年間5万円だった固定資産税が、更地になると20万〜30万円に増える可能性があります。年をまたいで売れなかった場合の負担増を見込んでおく必要があります。
解体から売却までの期間が短ければ影響は限定的ですが、更地にしたものの買主がなかなか見つからず、固定資産税の負担だけが増えるリスクは認識しておいてください。空き家の固定資産税については空き家の固定資産税で詳しく解説しています。
譲渡所得税と3000万円特別控除
空き家を売却して利益が出た場合、譲渡所得税が課されます。税率は所有期間によって異なり、5年超の長期譲渡所得で約20%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%)、5年以下の短期譲渡所得で約39%(所得税30%、復興特別所得税0.63%、住民税9%)です。
相続した空き家を売却する場合、一定の要件を満たすと「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」により、譲渡所得から最大3,000万円を控除できます。
| 主な適用要件 | 内容 |
|---|---|
| 被相続人が居住していた | 亡くなった人が住んでいた家であること |
| 昭和56年5月31日以前築 | 旧耐震基準の建物であること |
| 相続から3年後の年末まで | 売却期限の条件 |
| 売却価格1億円以下 | 売買代金の上限 |
| 耐震改修または解体 | 耐震基準を満たすか、更地にして売却 |
この特例は、古家付きで売却する場合は建物が耐震基準を満たしていること、更地で売却する場合は売主が解体していることが条件です。どちらの方法でも適用の道はありますが、要件が細かいため、売却前に税務署や税理士に確認してください。詳しい要件は空き家の3,000万円特別控除で整理しています。
スケジュールの比較
売却完了までの期間は、古家付きと更地で異なります。
| 工程 | 古家付き売却 | 更地売却 |
|---|---|---|
| 事前準備(名義・境界・残置物) | 1〜3か月 | 1〜3か月 |
| 解体工事 | なし | 2〜4週間(+手配に2〜4週間) |
| 建物滅失登記 | なし | 1〜2週間 |
| 販売活動 | 1〜6か月 | 1〜6か月 |
| 契約・引渡し | 1〜2か月 | 1〜2か月 |
| 合計目安 | 3〜11か月 | 5〜13か月 |
更地売却は解体工事と滅失登記の分だけ期間が長くなります。ただし、土地需要がある地域では更地のほうが早く買主が見つかることもあるため、一概に古家付きのほうが早いとは言えません。
相続から3年後の年末までに売却しないと3,000万円特別控除が使えなくなるため、スケジュールには余裕を持って動き始めてください。相続直後は遺産分割協議や相続登記に時間がかかることもあります。相続した空き家の初動については空き家を相続したらまずやることで整理しています。
判断の考え方
古家付き売却と更地売却のどちらを選ぶかは、以下の条件で整理すると判断しやすくなります。
古家付き売却が向いているケース
建物がまだ使える状態で、リフォームや建て替えの需要がある地域では、古家付きのまま売りに出したほうが合理的です。解体費をかけずに売れる可能性があり、買主がリノベーション前提であれば建物の古さは大きなマイナスになりません。
また、3,000万円特別控除を使うために耐震改修して売却する方法もありますが、耐震改修費(100万〜200万円程度)と効果を比較して検討してください。
更地売却が向いているケース
建物の老朽化が激しく、リフォームしても住めない状態であれば、更地のほうが買主に見てもらいやすくなります。建物が残っていると、買主は解体費を見込んで価格交渉をしてくるため、売主が先に解体しておいたほうが売却価格が上がることがあります。
土地需要が強いエリア(駅近、住宅地、学校区で人気のある地域)では、更地のほうが販売期間が短く済む傾向があります。
どちらが有利か分からない場合
不動産会社に「古家付き査定」と「更地想定査定」の両方を出してもらうのが確実です。解体費を差し引いた手残り、販売見込み期間、固定資産税の増額分を並べると、数字で比較できます。
買取業者に相談する方法もあります。古家付きでも更地でも買い取ってもらえる場合がありますが、買取価格は仲介による売却価格より低くなる傾向があります。買取の仕組みは空き家買取の流れと注意点で解説しています。
解体せず管理するという選択肢
売却も解体もすぐには決められない場合、当面は管理して保有を続けるという選択肢もあります。ただし、空き家を放置すると近隣トラブル、行政からの指導、特定空き家への指定といったリスクがあります。
管理を続ける場合の費用は、年間の固定資産税、火災保険、草刈りや通気のための訪問費用、修繕費を合算すると年間15万〜30万円程度になることが一般的です。管理の具体的な方法と費用は空き家の管理費用で整理しています。
管理コストが年々かさむ一方で将来の売却価格が下がる見込みであれば、早めに処分を検討したほうが結果的に有利になることが多いです。
よくある質問
古家付きと更地、どちらが高く売れますか。
土地需要が強く建物の状態が悪い地域では、更地のほうが高い査定が出やすいです。ただし、解体費を売主が負担するため、手残りで比較する必要があります。リフォーム需要のあるエリアでは、古家付きのまま売れることもあります。不動産会社に両方の査定を依頼して比較してください。
解体してから売却するまでに固定資産税はどのくらい増えますか。
住宅用地の特例がなくなると、固定資産税は最大で6倍になる計算です。実際の増額幅は土地の評価額と自治体の税率によりますが、年間10万〜20万円以上の増額になるケースもあります。年をまたいで売れなかった場合の負担増を計算に入れて、解体のタイミングを検討してください。
3000万円特別控除は古家付き売却でも使えますか。
使える場合があります。ただし、建物が耐震基準を満たしていることが条件の一つです。旧耐震基準の建物をそのまま売却する場合は、売却前に耐震改修を行うか、更地にして売却する必要があります。適用要件は細かいため、売却前に税務署または税理士に確認してください。
解体費用を抑える方法はありますか。
複数の解体業者から見積もりを取って比較することが基本です。解体業者によって費用に差が出るため、2〜3社への見積もり依頼を推奨します。自治体の解体補助金が使えるケースもあります。残置物を事前に自分で処分しておくと、処分費分を抑えられることもあります。