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住宅ローン

住宅ローンは頭金なしでも組める?フルローンのメリット・リスク・審査のコツ

住宅購入を検討し始めると、「頭金は物件価格の2割が目安」という情報を目にすることがあります。しかし実際には、住宅ローンを頭金なし(フルローン)で組むことは多くの金融機関で可能です。住宅金融支援機構の「住宅ローン利用者の実態調査」(2025年4月公表)でも、頭金なしまたは物件価格の1割未満で住宅ローンを組んだ世帯は一定の割合を占めています。

頭金なしで住宅ローンを組むことには手元資金を温存できるメリットがある一方、借入額が増えることによる返済負担の増加やオーバーローン状態のリスクもあります。この記事では、フルローンのメリットとデメリット、頭金ありとの返済額比較、審査を通すためのポイントを整理します。

フルローン(頭金0円)で住宅ローンを組める条件

フルローンとは、物件価格の全額を住宅ローンで借り入れることを指します。多くの民間銀行で物件価格の100%まで融資を受けることが可能です。一部の金融機関では諸費用(登記費用や仲介手数料など)まで含めたオーバーローンに対応している商品もあります。

ただし「組める」ことと「審査に通る」ことは別の話です。フルローンで審査を通すには、以下の条件を満たす必要があります。

条件理由
安定した収入がある勤続年数2年以上、正社員・公務員が有利
返済負担率が基準以内年収に対する年間返済額の割合。年収400万円以上は35%以下が目安
信用情報に問題がない延滞履歴、債務整理の記録がない
物件の担保評価が十分借入額に対して物件の評価額が見合っている
他の借入が少ないカードローン、リボ払い、自動車ローン等の残高が少ない

フラット35の場合、融資率(物件価格に対する借入額の割合)が90%を超えると金利が上がる仕組みがあります。フルローンで利用すると、90%以下の場合と比べて金利が年0.2〜0.3%程度高くなります。

住宅ローン審査の仕組み全般は住宅ローン審査に落ちたらどうする?原因と対処法で詳しく解説しています。

フルローンの3つのメリット

1. 手元資金を温存できる

頭金に充てる予定だった資金を手元に残すことで、引っ越し費用、家具・家電の購入、予備の生活費に回せます。住宅購入後は想定外の出費が発生しやすく、手元の現金が少ないと家計が逼迫します。

住宅購入にかかる諸費用(物件価格の5〜10%程度)は現金で支払うケースが多いため、頭金を無理に入れると諸費用の支払いで貯蓄が底をつくリスクがあります。

2. 住宅ローン控除の恩恵を最大化できる

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、年末時点のローン残高に対して一定割合が所得税・住民税から控除される制度です。借入額が大きいほど控除額も大きくなるため、頭金を多く入れて借入額を減らすと、控除の恩恵が小さくなります。

2024年入居の場合、控除率は0.7%、控除期間は最長13年です。ローン残高の上限は住宅の省エネ性能によって異なり、認定長期優良住宅では5,000万円です。

ただし控除額は実際に納めている所得税・住民税が上限であるため、年収によっては控除枠を使いきれないこともあります。控除の恩恵だけを理由にフルローンを選ぶのではなく、返済計画と合わせて判断してください。

3. 低金利環境では借入コストが相対的に低い

変動金利が年0.3%〜0.7%台の水準にある現在、住宅ローンの実質的な借入コストは歴史的に低い状態です。仮に手元資金を年2〜3%で運用できるなら、住宅ローンの金利を差し引いてもプラスになる計算です。

ただしこれは金利が低い状態が続くことと、運用がプラスになることの2つの前提に依存しています。変動金利の上昇リスクについては住宅ローンは変動と固定どっちが得?で試算を交えて解説しています。

フルローンの4つのデメリット

1. 月々の返済額が増える

借入額が大きくなる分、毎月の返済額も増えます。4,000万円の物件で頭金800万円を入れた場合と比べると、月々の返済額は数万円の差になります(後述のシミュレーションで具体的な数字を確認できます)。

2. 利息の総支払額が増える

借入額が増えれば、35年間で支払う利息の総額も増えます。同じ金利でも借入額が800万円多いと、利息だけで数百万円の差になります。繰上返済で差を縮めることは可能ですが、繰上返済できる余裕がなければ差はそのまま残ります。

3. オーバーローン状態のリスク

フルローンで購入した直後は、ローン残高が物件の市場価値を上回る「オーバーローン」状態になりやすいです。住宅は購入直後から市場価格が下落し始めるのが一般的で、新築マンションでは購入直後に1〜2割下がることもあります。

オーバーローン状態で売却しなければならなくなった場合(転勤、離婚、家計悪化など)、売却額でローンを完済できず、差額を手出しする必要が出ます。

頭金の額購入直後のオーバーローンリスク
0%(フルローン)高い。物件価格下落で即オーバーローン
10%中程度。物件価格が10%以上下落しなければ解消
20%低い。ある程度の価格下落でも残高が評価額を下回りにくい

4. 金利優遇が受けられない場合がある

フラット35では融資率90%超で金利が上乗せされます。民間銀行でも、フルローンの場合に金利引き下げ幅が小さくなる商品があります。表面上の金利差は年0.1〜0.3%程度ですが、35年の返済では総額で数十万円から百万円超の差になります。

頭金あり(10%・20%)との返済額比較

物件価格4,000万円、変動金利0.6%、35年返済(元利均等、ボーナス払いなし)のモデルケースで比較します。

項目頭金0%(フルローン)頭金10%(400万円)頭金20%(800万円)
借入額4,000万円3,600万円3,200万円
月々の返済額約105,600円約95,000円約84,500円
年間返済額約126.7万円約114.0万円約101.4万円
総返済額(35年)約4,434万円約3,991万円約3,548万円
うち利息約434万円約391万円約348万円

フルローンと頭金20%では、月々の返済額に約2.1万円、総利息に約86万円の差があります。頭金800万円を手元に残した場合の運用益や住宅ローン控除の差額と比較して判断するこになります。

金利が上昇した場合の影響も確認しておくべきです。変動金利が1.5%に上がった場合のフルローンの月々返済額は約12.2万円、2.0%なら約13.3万円になります。

繰上返済による総利息の圧縮効果は住宅ローンの繰上返済は得か損か?判断基準とシミュレーションで詳しく試算しています。

フルローンで審査を通すコツ

フルローンは借入額が物件価格と同額になるため、金融機関の審査は頭金ありの場合より厳しくなります。審査を通りやすくするためのポイントを整理します。

返済負担率を25%以下に抑える

金融機関の審査基準では年収400万円以上で返済負担率35%以下が一般的ですが、フルローンの場合は25%以下に抑えておくと審査の通過率が上がります。返済負担率には住宅ローンだけでなく、自動車ローン、カードローン、リボ払い、教育ローンなど全ての借入の返済額が含まれます。

他の借入を完済してから申し込む

カードローンやリボ払いの残高がある場合、住宅ローン申し込み前に完済してください。利用していないカードローン枠(契約だけして借りていない枠)も、金融機関によっては返済負担率の計算に含めるケースがあります。不要なカードローンは解約しておくのが安全です。

勤続年数と雇用の安定性を示す

多くの金融機関は勤続年数2年以上を目安としています。転職したばかりの場合は、同業種への転職で年収が上がっていることを示せると有利に働くことがあります。自営業・フリーランスは直近3年分の確定申告書が求められるのが一般的です。

物件の担保評価を意識する

フルローンは借入額が大きいため、物件の担保評価(金融機関が査定する不動産の価値)が借入額に見合っているかが重要です。新築物件は建築費がほぼ担保評価に反映されるため通りやすく、中古物件は築年数や立地によって評価が下がりフルローンが通りにくくなることがあります。

複数の金融機関に事前審査を出す

金融機関によってフルローンへの姿勢は異なります。1社に断られても別の金融機関で通ることは珍しくありません。事前審査(仮審査)は信用情報への影響が限定的であるため、3社程度に同時に出して条件を比較するのが効率的です。

頭金ゼロでも用意しておくべき現金

フルローンで物件価格全額を借りる場合でも、現金で支払う必要がある費用があります。

費用項目目安
登記費用(登録免許税+司法書士報酬)20万〜40万円
仲介手数料(中古の場合)物件価格の3%+6万円+消費税
住宅ローンの事務手数料定額型3万〜5万円、定率型は借入額の2.2%
火災保険・地震保険10万〜30万円(5年一括)
固定資産税・都市計画税の精算数万〜十数万円
引っ越し費用10万〜30万円
家具・家電の購入費50万〜150万円(必要に応じて)

諸費用の合計は、新築で物件価格の5〜7%、中古で7〜10%が目安です。4,000万円の新築なら200万〜280万円程度です。諸費用ローンを利用する方法もありますが、金利が住宅ローンより高く設定されていることが多いため、諸費用分の現金は最低限確保しておくのが安全です。

住宅ローンにかかる各種手数料の詳細は住宅ローンの事務手数料・保証料の比較で整理しています。

フルローンが向いている人・向いていない人

向いている人理由
安定した収入があり返済負担率に余裕がある月々の返済増を吸収できる
手元資金を運用や緊急予備費に回したい低金利の恩恵を最大化
今後の収入増が見込める若年世帯繰上返済で早期に残高を減らせる
住宅ローン控除の恩恵を最大化したい借入額が大きいほど控除額も大きい
向いていない人理由
返済負担率が30%を超える家計に余裕がなくなる
転職予定がある・収入が不安定金利上昇や収入減に対応しにくい
数年以内に売却の可能性があるオーバーローンで売却損が出る
他の借入が多い審査が通りにくく、通っても返済負担が重い

よくある質問

頭金なしでも住宅ローンの審査は通りますか。

通る可能性はあります。金融機関の多くは物件価格の100%まで融資する商品を用意しています。ただし、頭金ありの場合と比べて借入額が大きくなるため、返済負担率や信用情報、勤続年数などの審査基準がより厳格に見られます。返済負担率を25%以下に抑え、他の借入を整理したうえで複数の金融機関に事前審査を出してください。

頭金はいくらあれば理想ですか。

かつては「物件価格の2割」が目安とされていましたが、現在の低金利環境では必ずしもその水準を用意する必要はありません。フラット35を利用する場合、融資率90%以内に収めると金利が低くなるため、物件価格の1割を頭金として入れるのは合理的な選択です。それ以上入れるかどうかは、手元に残る現金の余裕、住宅ローン控除の恩恵、将来の繰上返済計画を総合して判断してください。

フルローンで購入した後に金利が上がったらどうなりますか。

変動金利のフルローンで金利が上昇すると、月々の返済額が増えます。多くの変動金利商品には「5年ルール」(5年間は返済額が変わらない)と「125%ルール」(返済額の増加は前回の125%まで)が設けられていますが、返済額が据え置かれている間も利息は増えているため、元本の返済が進みにくくなります。金利上昇に備えるには、余裕のある返済負担率で借り入れ、繰上返済の原資を確保しておくことが重要です。

諸費用まで住宅ローンに含められますか。

一部の金融機関では諸費用(登記費用、仲介手数料、火災保険料など)を含めた融資に対応しています。ただし、物件価格を超える融資(オーバーローン)は金利が上乗せされたり、審査がさらに厳しくなったりすることがあります。諸費用分は自己資金で賄うのが基本であり、諸費用まで借りる場合は返済計画を慎重に立てる必要があります。

「借りられる額」と「返せる額」は違う

住宅ローンを頭金なしで組めるかどうかは、金融機関の審査基準と自分の信用力次第であり、制度上は十分に可能です。問題は、借りられる上限まで借りてよいかどうかという判断にあります。

フルローンは手元資金を残せる反面、毎月の返済額が増え、金利上昇や収入減に対する余力が小さくなります。審査に通ったからといって返済が楽になるわけではなく、「借りられる額」と「無理なく返せる額」の間には開きがあります。月々の返済額が手取り収入の25%以内に収まるかどうかを基準に、借入額を決めてください。

頭金の額や借入プランは、複数のハウスメーカーや金融機関の提案を比較して決めると失敗しにくくなります。家づくりの無料一括相談サービスで資金計画を含めた提案を取り寄せてみてください。

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