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住宅ローン

住宅ローン変動金利の5年ルールと125%ルール — 仕組みと落とし穴を解説

変動金利の「5年ルール」と「125%ルール」は安心材料ではない

住宅ローンの変動金利を検討していると、「5年ルール」「125%ルール」という言葉に出会います。住宅ローンの変動金利に適用される5年ルールは、金利が上がっても返済額が急に増えないようにする仕組みです。ただし、返済の「見かけ」を安定させるだけであって、金利上昇で増えた利息負担がなくなるわけではありません。この2つのルールを正しく理解しないまま変動金利を選ぶと、ローン後半で想定外の負担に直面する可能性があります。

本記事では、5年ルールと125%ルールの具体的な仕組み、ルール適用中に水面下で起きていること、適用されない銀行の特徴、そして金利1%上昇時のシミュレーション比較までを解説します。

5年ルールの仕組み ── 返済額を5年ごとに見直す

変動金利型の住宅ローンでは、金融機関が半年ごと(4月と10月、あるいは7月と1月)に適用金利を見直します。金利は市場動向に応じて上下しますが、多くの金融機関はこの見直しのたびに毎月の返済額を変更しません。返済額が実際に変わるのは5年に1回、ローン返済開始から5年目・10年目・15年目……のタイミングです。これが5年ルールの基本構造です。

半年ごとの金利見直しで変わるのは、毎月の返済額の「中身」です。返済額の総額は据え置かれたまま、利息と元金の配分だけが入れ替わります。金利が上がれば利息の取り分が増え、元金の返済に回る金額が減ります。金利が下がればその逆です。

住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査(2025年4月公表)」によると、変動金利を選んだ人の約7割が「金利が低いから」を選択理由に挙げています。当初の返済額の低さに注目しがちですが、5年ルールで見えなくなっている内部の変化を把握しておくことが、変動金利を安全に使いこなすための前提になります。

住宅ローン全体の金利タイプの選び方は住宅ローンの基礎知識で整理しています。

125%ルールの仕組み ── 増額幅を前回の125%に制限する

5年ルールとセットで設けられているのが125%ルールです。5年後に返済額を再計算する際、新しい返済額が前回返済額の1.25倍(125%)を超えないように制限する仕組みです。

たとえば5年間の返済額が月80,000円だった場合、次の5年間の返済額は最大でも100,000円(80,000円 x 1.25)までにとどまります。たとえ金利水準から計算した本来の返済額が月12万円であっても、125%の上限で頭打ちになります。

125%ルールは返済額の急増から家計を守る趣旨で作られていますが、上限を超えた分が免除されるわけではありません。本来の返済額との差額は「未払い利息」という形で蓄積されていきます。この点が125%ルールの落とし穴です。

5年ルール適用中に起きていること ── 元本が減らない問題

5年ルールの期間中に金利が上昇した場合、毎月の返済額は変わりませんが、内部の利息と元金の配分が大きく変わります。借入額3,000万円・35年返済・元利均等返済の条件で推移を見てみましょう。

時点適用金利毎月返済額うち利息うち元金
返済開始時0.65%79,880円16,250円63,630円
2年後(金利1.15%に上昇)1.15%79,880円27,350円52,530円
4年後(金利1.65%に上昇)1.65%79,880円37,680円42,200円

返済額はずっと79,880円のままですが、元金に充当される金額は63,630円から42,200円まで減少しています。4年後の時点では、返済額のほぼ半分が利息に消えている計算です。5年間で返済される元金の合計は、金利が据え置きだった場合と比べて数十万円少なくなります。

こうして元金の減りが鈍った状態で5年目の見直しを迎えると、残債が想定より多く残っているため、125%ルールの上限いっぱいまで返済額が引き上げられることがあります。

未払い利息 ── 最終返済月に一括請求されるリスク

金利が大幅に上昇した場合、125%ルールで上限が設けられた返済額では、毎月発生する利息すら払いきれない事態が起こり得ます。払いきれなかった利息が「未払い利息」としてローン残高に上乗せされる仕組みです。

借入3,000万円・35年返済・当初0.65%のローンで、5年後に金利が3.0%に上昇したケースで試算します。

毎月約19,000円の未払い利息が発生し、年間では約23万円、5年間で約115万円が積み上がります。未払い利息は返済期間の最終月に一括で請求されるのが一般的です。住宅ローンの完済時に100万円を超える追加支払いを求められれば、家計への打撃は深刻です。

金利が「0.5%程度の上昇」であれば未払い利息が生じることはほぼありませんが、2%台後半から3%台に到達した場合は現実的なリスクになります。2026年現在、日本銀行の政策金利引き上げを受けて変動金利の基準金利は上昇傾向にあり、以前よりもこのシナリオを意識しておく必要があります。金利上昇への備え方全般については住宅ローン金利上昇への対策で詳しく解説しています。

35年ローン満了時に残債が残るケース

5年ルール・125%ルールによる返済額の抑制が長期間にわたると、35年の返済期間が終了した時点でもローンを完済できない場合があります。

通常、元利均等返済では35年後にちょうど残債がゼロになるように返済額が計算されます。しかし5年ルールと125%ルールで返済額が抑えられている間は、計算上の想定よりも元金の減りが遅くなるため、35年では返しきれない残高が発生し得ます。

この場合、金融機関によって対応は異なりますが、返済期間の最終月に残債と未払い利息をまとめて一括返済するよう求められるのが一般的です。返済期間の延長に応じてくれる金融機関もありますが、その場合も延長期間分の利息負担が加わります。

35年後に数百万円の一括請求が来るという事態を避けるには、5年ルール期間中であっても繰り上げ返済で元金を減らしておくことが有効な対策になります。

5年ルールが適用されない銀行一覧

すべての金融機関が5年ルールと125%ルールを採用しているわけではありません。一部のネット銀行では金利変動が返済額に即座に反映される「即時反映型」を採用しています。

金融機関5年ルール125%ルール備考
三菱UFJ銀行ありあり
三井住友銀行ありあり
みずほ銀行ありあり
りそな銀行ありあり
住信SBIネット銀行ありあり
auじぶん銀行ありあり
イオン銀行ありあり
PayPay銀行ありあり
SBI新生銀行なしなし金利変動が翌月から反映
ソニー銀行なしなし金利変動が翌月から反映

5年ルールなし・ありの両方にメリットとデメリットがあります。

5年ルールありの銀行では、返済額が急変しないため家計の見通しが立てやすくなります。月々のやりくりを重視する家庭、共働きで教育費と住宅ローンを両立させたい家庭には安心材料になります。ただし前述のとおり、返済額の安定と引き換えに未払い利息リスクを抱えるこになります。

5年ルールなしの銀行では、金利が上がれば翌月から返済額が増え、下がれば減ります。未払い利息が発生しにくく、残債の把握が正確にできる点がメリットです。一方で返済額が毎月変わる可能性があるため、返済余力に十分な余裕がないと家計管理が難しくなります。

住宅ローンの審査基準と選び方については住宅ローンの事前審査のポイントも参考にしてください。

シミュレーション ── 金利1%上昇時の5年ルールあり/なし比較

ここからは、金利が1%上昇した場合に5年ルールの有無で返済額がどう変わるかを比較します。

条件: 借入3,000万円・35年返済・元利均等返済・当初金利0.65%・3年後に金利が1.65%に上昇しその後固定

5年ルールありの場合

期間適用金利毎月返済額うち利息(概算)うち元金(概算)
1〜3年目0.65%79,880円16,250円 → 14,500円63,630円 → 65,380円
3〜5年目1.65%79,880円(据え置き)37,680円42,200円
6〜10年目1.65%95,200円(見直し後)35,100円60,100円

3年目から5年目の2年間は返済額が変わらないまま利息の割合が急増し、元金の返済ペースが鈍ります。6年目の見直しで返済額は月15,320円の増加。この間に蓄積された「元金の遅れ」は、残りの返済期間全体で取り返す必要があります。

5年ルールなしの場合

期間適用金利毎月返済額うち利息(概算)うち元金(概算)
1〜3年目0.65%79,880円16,250円 → 14,500円63,630円 → 65,380円
3年目〜(金利変更直後)1.65%93,500円37,200円56,300円

金利変更の翌月から返済額が約13,600円増加します。即座に負担増を感じますが、元金の返済ペースの鈍化は最小限に抑えられます。未払い利息は発生しません。

総返済額の差

35年間の総返済額を比較すると、5年ルールありのケースでは「据え置き期間中の元金返済の遅れ」を残りの期間で取り返す必要があるため、総返済額が5年ルールなしと比べて20万〜40万円多くなる傾向があります。返済額の安定と引き換えに、総コストがやや増えるという構造です。

住宅ローンシミュレーターで自分の借入条件を入力して試算してみてください。

金利上昇に備える実務的な対策

5年ルールの有無に関係なく、変動金利を選ぶ場合に取れる対策を4つ挙げます。

繰り上げ返済の原資を毎月積み立てる方法があります。固定金利との差額を貯蓄に回し、金利が上がった時点で繰り上げ返済に充てる戦略です。固定なら月10.7万円、変動なら月8.0万円の返済額であれば、差額の2.7万円を毎月ストックすれば5年間で約162万円になります。

金利のトリガーラインを事前に決めておくことも重要です。「変動金利が1.5%を超えたら固定への切り替えを検討する」「2.0%を超えたら繰り上げ返済を実行する」など、行動基準を数字で定めておくと、金利上昇局面でも冷静に判断できます。

返済期間の短縮も有効です。35年で組んだローンを繰り上げ返済で実質25〜30年に縮めれば、金利上昇リスクにさらされる期間自体が短くなります。期間短縮型の繰り上げ返済は、返済額軽減型より総支払利息の削減効果が大きいことも覚えておくとよいでしょう。

借り換えの準備を進めておく方法もあります。他の金融機関で仮審査を通しておけば、金利環境が変わったときに選択肢を広げられます。借り換えには登記費用や事務手数料(30万〜80万円程度)がかかるため、金利差と残期間で損得を計算してから判断してください。住宅ローンの借り換え判断基準も参考になります。

よくある質問

5年ルールがあれば金利上昇の影響を受けないのですか。

受けます。5年ルールは毎月の返済額の変更を5年ごとにまとめるだけであり、金利上昇による利息負担の増加は据え置き期間中にも進行しています。返済額は変わらなくても、元金の減りが鈍くなるため、5年後の見直し時に大幅な増額になったり、未払い利息が発生したりする可能性があります。

未払い利息が発生したらどうすればよいですか。

未払い利息は放置すると返済最終月に一括請求されるため、繰り上げ返済で早めに元金を減らすことが最も有効な対応策です。毎年の残高証明書でローン残高の推移を確認し、計画どおりに元金が減っていない場合は繰り上げ返済を検討してください。金融機関の窓口で未払い利息の有無と金額を確認することもできます。

5年ルールのない銀行はどういう人に向いていますか。

返済余力に十分な余裕がある人、家計管理の透明性を重視する人に向いています。金利が上がれば翌月から返済額が増えるため、収入に対する返済比率を低め(20%以下)に設定しておくと安心です。逆に、返済比率が高めで家計に余白が少ない場合は、5年ルールの猶予がある銀行を選んだほうが短期的なやりくりはしやすくなります。

変動金利が何%になったら固定に切り替えるべきですか。

一律の目安はありませんが、「固定に切り替えた場合の返済額で家計が回るか」を基準にするのが実務的です。変動金利が2%を超えるとフラット35(2026年4月時点で1.8〜2.0%台)との差が縮まり、切り替えのメリットが出てくる可能性があります。切り替えには手数料や登記費用がかかるため、コスト込みで損得を試算してください。

金利タイプの判断は複数社の資金計画を比べてから

変動金利の5年ルールと125%ルールは、金利上昇時に返済額の急変を防ぐ緩衝装置です。短期的に家計を安定させる効果はありますが、元金の減りが鈍る問題や未払い利息の蓄積リスクを理解しておかなければ、35年後に想定外の負担に直面する可能性があります。

5年ルールがない銀行を選ぶ場合は、金利上昇が返済額に即座に反映されることを前提に、返済余力にゆとりを持って借りることが条件です。どちらのタイプが自分に合っているかは、年収・家族構成・将来の支出予定によって異なります。

住宅ローンの金利タイプは、建築費・頭金・世帯収入のバランスで結論が変わります。注文住宅の一括資料請求で複数社の資金計画を取り寄せると、変動と固定のどちらが無理のない前提か判断しやすくなります。

出典

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