執筆: 家づくりナビ編集部
編集・確認: 株式会社ローカルマーケティングパートナーズ (最終確認: )
空き家バンクと不動産屋の違い|手数料・物件数・サポートの比較と目的別使い分け
空き家を売りたい、あるいは安く手に入れたいと考えたとき、「空き家バンク」と「不動産屋(不動産仲介会社)」のどちらを使うべきか迷う人は少なくありません。空き家バンクと不動産屋の違いは、運営主体、手数料の有無、取り扱い物件の性質、契約手続きのサポート範囲など多岐にわたります。どちらが優れているという話ではなく、売却・購入の目的と物件の状況によって使い分けるのが現実的です。
この記事では、空き家バンクと不動産屋の仕組みの違いを項目ごとに整理し、手数料の具体的なシミュレーションも交えながら、売主・買主それぞれの立場で適した選び方を解説します。
空き家バンクと不動産屋の基本的な違い
空き家バンクは、自治体が運営する空き家の登録・公開システムです。地域の空き家情報を集約し、移住希望者や利用希望者とマッチングすることを目的としています。一方、不動産屋(不動産仲介会社)は、宅地建物取引業法に基づく免許を持つ民間事業者が、売買・賃貸の仲介を業として行うものです。
| 比較項目 | 空き家バンク | 不動産屋 |
|---|---|---|
| 運営主体 | 自治体(市区町村) | 民間の宅建業者 |
| 目的 | 空き家の利活用促進・移住促進 | 不動産取引の仲介・利益確保 |
| 仲介手数料 | 基本なし(自治体直接マッチング) | 売買価格の3%+6万円+税(上限) |
| 物件数 | 地域限定で少数 | ポータルサイト経由で膨大 |
| 対象物件 | 地方・郊外の戸建て中心、低価格帯・難物件も登録されやすい | 都市部から地方まで幅広い、市場性のある物件が中心 |
| 契約の安全性 | 自治体は仲介行為ができず、当事者の責任で進める | 重要事項説明・契約書作成・決済立会いまで専門家が対応 |
| サポート範囲 | 情報の掲載とマッチングまで | 査定・販売活動・ローン斡旋・登記段取りまで一括 |
| 売却スピード | 買主が現れるまで時間がかかりやすい | 販売戦略を立てて短期化を図りやすい |
| 主な利用層 | 移住者・二拠点居住・DIY志向 | 一般的な住宅購入者・売却希望者 |
空き家バンクは「情報の橋渡し」が主な役割であり、売買契約や登記手続きを自治体が代行することはできません。実際の取引では、空き家バンク経由で物件を見つけた後、地元の不動産会社に仲介を依頼するか、売主と買主で直接交渉するかのいずれかになります。空き家バンクの登録手順や使い方の詳細は空き家バンクの登録と活用方法で整理しています。
手数料・物件数・サポート・安全性のどこを重視するかで向き不向きが分かれます。費用を抑えたいなら空き家バンク、安全性や手間の少なさを優先するなら不動産屋という関係を、次の図で整理しておきます。
空き家バンクのメリットとデメリット
空き家バンクには、不動産屋にはない特徴があります。利用前にメリットとデメリットの両面を把握しておくと判断を誤りにくくなります。
空き家バンクのメリット
仲介手数料がかからない点は、空き家バンクの最も大きなメリットです。不動産会社を介さずに売主と買主が直接やり取りする場合は、売買価格の3%+6万円+税という仲介手数料が発生しません。500万円の物件であれば約21万円、1,000万円なら約36万円の差になり、低価格帯の空き家ほど節約効果の体感は大きくなります。ただし、自治体が不動産会社への仲介を勧めるケースも多く、その場合は通常どおり手数料が発生します。
自治体の補助制度と連動している場合もあります。空き家バンクを通じて物件を取得すると、リフォーム補助金、引越し費用助成、定住奨励金などを受けられる自治体が少なくありません。こうした補助制度は空き家バンク経由の取得を条件にしていることがあるため、不動産屋で同じ物件を買っても対象外になるケースがあります。
不動産屋が扱わない物件に出会える点も見逃せません。築50年超の古民家、山あいの農地付き住宅、再建築不可の物件などは、不動産会社にとっては仲介手数料が低く、トラブルリスクが高いため取り扱いを敬遠されがちです。空き家バンクにはそうした物件が登録されやすく、古民家を安く手に入れてDIYで改修したい人には選択肢が広がります。
空き家バンクのデメリット
物件数が限られている点は、空き家バンクの大きな弱点です。総務省の令和5年住宅・土地統計調査によると、全国の空き家は約900万戸、空き家率は13.8%と過去最高を更新しています。これだけの空き家が存在する一方で、空き家バンクに登録されている物件はその一部にとどまります。自治体ごとに運営されているため、隣の市の物件は別の空き家バンクを確認しなければならず、横断的に探すには手間がかかります。
契約手続きの専門サポートがない点も注意が必要です。不動産屋であれば、重要事項説明、契約書の作成、住宅ローンの斡旋、登記手続きの段取りまで一括で対応しますが、空き家バンクにはその機能がありません。売主と買主が直接取引する場合、契約不適合責任の取り決め、境界確認、残置物処理、瑕疵の告知範囲などを自分たちで整理する必要があります。不動産取引の経験がない人には負担が大きくなります。
物件の状態が把握しにくいこともあります。不動産屋の仲介物件は、ある程度の調査が済んだ状態で情報が掲載されます。空き家バンクの登録物件は、所有者が提供した情報をそのまま掲載しているケースが多く、建物の劣化状態、シロアリ被害、雨漏り、設備の故障といった情報が十分でないことがあります。現地確認は入念に行い、気になる箇所はホームインスペクション(建物状況調査)の利用を検討してください。
不動産屋のメリットとデメリット
不動産屋に依頼する場合のメリットとデメリットも整理します。
不動産屋のメリット
物件情報量が圧倒的に多い点が最大の強みです。レインズ(不動産流通機構)に登録された売出し物件を横断検索でき、SUUMOやHOME’Sなどのポータルサイト経由でも多数の物件にアクセスできます。価格帯、エリア、築年数、面積など条件を細かく絞り込めるため、希望に合う物件を効率よく探せます。
取引の専門サポートが受けられる点も大きな利点です。宅地建物取引士による重要事項説明は法的に義務付けられており、物件の権利関係、法令上の制限、設備の状態が書面で説明されます。住宅ローンの仲介、火災保険の手配、司法書士との連携、引渡し後のフォローまで、売買に必要な手続きを一通り任せられるため、不動産取引に慣れていない人でも進めやすいです。
売却相場の精度も高い傾向があります。不動産会社は地域の成約事例にアクセスできるため、適正な売出し価格を設定しやすく、販売戦略(値付け・広告・内覧対応)を立てて売れるまでの期間を短縮できます。
不動産屋のデメリット
仲介手数料がかかります。法定上限は「売買価格 x 3% + 6万円 + 消費税」で、売主・買主双方に発生します。100万円以下の低価格物件では、手数料が物件価格に対して割高に感じることがあります。
低価格帯の空き家は取り扱いを断られることもあります。仲介手数料が売上になるビジネスモデルのため、100万〜300万円程度の空き家では手数料が数万円にしかならず、調査・書類作成・内覧対応のコストに見合わないと判断されるためです。田舎の古い空き家を売りたいのに不動産会社に相手にされなかった、という話は珍しくありません。
手数料はどれだけ変わるのか — 価格別シミュレーション
空き家バンクと不動産屋の差が最もはっきり出るのが、売主・買主に発生する仲介手数料です。宅地建物取引業法では、売買価格が400万円を超える場合の仲介手数料の上限を「売買価格×3%+6万円(別途消費税)」と定めています。この上限額をもとに、物件価格ごとの手残りの差を試算します。
| 物件価格 | 不動産屋(仲介手数料の上限・税込) | 空き家バンク(自治体仲介or直接取引) | 差額の目安 |
|---|---|---|---|
| 300万円 | 約15.4万円(※400万円以下は別計算で上限あり) | 0〜数万円 | 約15万円 |
| 500万円 | 約23.1万円 | 0〜数万円 | 約23万円 |
| 800万円 | 約33万円 | 0〜数万円 | 約33万円 |
仲介手数料は売主と買主の双方に発生します。売主の立場では受け取る金額が手数料分だけ目減りし、買主の立場では支払総額が手数料分だけ上乗せされます。価格が上がるほど手数料の絶対額も大きくなるため、800万円の物件では片側だけで30万円超の差が生まれます。
ただし、手数料の安さだけで空き家バンクを選ぶのは早計です。不動産屋に支払う手数料には、重要事項説明、契約書作成、決済立会いといった取引の安全を担保する業務の対価が含まれています。直接取引で手数料を節約した結果、引渡し後に契約不適合責任や境界をめぐるトラブルが起き、結果的に手数料以上の負担を抱えるケースもあります。節約できる金額と、自分で負うべきリスクを天秤にかけて判断してください。
売却時の使い分け — 売主の立場
空き家を手放したい売主が、空き家バンクと不動産屋のどちらを使うかは、物件の価格帯と立地で判断するのが合理的です。
| 物件の状況 | おすすめの方法 | 理由 |
|---|---|---|
| 都市部・駅近・築浅 | 不動産屋 | 市場価格で売れる見込みが高い |
| 地方都市・相場500万〜1500万円 | 不動産屋 + 空き家バンク併用 | 露出を増やし買主を広く探す |
| 田舎・過疎地・100万円以下 | 空き家バンク中心 | 不動産屋が扱いにくい価格帯 |
| 古民家・農地付き・再建築不可 | 空き家バンク | 移住・DIY層にリーチしやすい |
空き家バンクと不動産屋は排他的な関係ではありません。空き家バンクに登録しつつ、地元の不動産会社にも媒介契約を結んで両方のチャネルで買主を探す方法が現実的です。一般媒介契約を選べば、複数の不動産会社と空き家バンクを併用できます。
売却と活用のどちらが有利かを比較検討したい場合は、空き家の売却と活用の比較で判断基準を整理しています。
購入時の使い分け — 買主の立場
空き家を購入する側にとっても、目的に応じて窓口を変えるのが効率的です。
通常の中古住宅購入なら不動産屋を利用する方が安全です。住宅ローン審査のサポート、物件の法的調査、契約書類の作成を一括で任せられるため、取引リスクが低くなります。住宅ローンを利用する場合、金融機関は重要事項説明書の提出を求めることが多く、不動産会社を介さない直接取引ではローン審査に通りにくいことがあります。
地方移住やDIY改修を前提とした購入なら、空き家バンクを積極的に活用してください。自治体の移住支援策と連動した補助金を受けられる可能性があり、購入コストを大きく下げられるケースがあります。ただし、建物の状態を自分で判断する必要があるため、購入前にホームインスペクションを実施し、改修費用の概算を把握してから契約することを強く勧めます。
空き家の買取業者に直接売却する方法もあります。仲介手数料なし、残置物あり、境界未確定でも対応可能な業者があり、「とにかく早く手放したい」場合に適しています。買取の流れは空き家買取の仕組みと注意点で詳しく解説しています。
空き家バンクと不動産屋を併用するときの注意点
両方を使う場合にトラブルになりやすいポイントを整理します。
仲介契約の種類に注意してください。専属専任媒介契約や専任媒介契約を不動産会社と結んでいると、空き家バンク経由で見つかった買主とも、その不動産会社を介さなければなりません。空き家バンクとの併用を想定するなら、一般媒介契約を選択する必要があります。
売出し価格の整合性も重要です。空き家バンクに登録した価格と、不動産ポータルサイトに掲載した価格が異なっていると、買主に不信感を与えます。空き家バンク特有の値下げ対応をする場合は、不動産会社にも事前に伝えてください。
直接取引のリスクを過小評価しないことも大切です。空き家バンクで買主が見つかり、仲介手数料を節約するために直接取引をしたものの、引渡し後に雨漏り、境界トラブル、残置物処分で揉めるケースは少なくありません。取引金額が大きい場合は、仲介手数料を払ってでも不動産会社に契約手続きを依頼するほうが安全です。
空き家を手放す前に確認したいこと
空き家バンクと不動産屋のどちらを使うにしても、売却前に整理しておくべき事項があります。
登記名義が現在の所有者になっているかを確認してください。相続した空き家は、亡くなった親の名義のままになっていることが多く、名義変更が完了するまで売却手続きは進められません。相続登記は2024年4月1日から義務化され、相続を知った日から3年以内の申請が求められ、正当な理由なく怠ると過料の対象になりえます。
特定空家・管理不全空家に指定されると不利になる点も押さえておきましょう。空家等対策の推進に関する特別措置法に基づき、倒壊の恐れがある特定空家や、放置すれば特定空家になりかねない管理不全空家に指定され、自治体の勧告を受けると、住宅用地の固定資産税の軽減特例が解除され税負担が増える場合があります。空き家を持て余して放置するほど不利になるため、売却・活用の判断は早めに進めるのが得策です。詳しくは特定空家に指定されるリスクで整理しています。
建物の不具合は隠さず共有してください。雨漏り、シロアリ、傾き、設備の故障は売買後のトラブルの主因です。告知義務がある不具合を隠して売却し、後から発覚した場合は契約不適合責任を問われます。空き家バンクでの直接取引であっても、この責任は免除されません。
空き家の管理が難しい状態が続いているなら、管理サービスの利用も選択肢になります。売却先が決まるまでの間、近隣トラブルや資産価値の低下を防ぐ方法は空き家管理サービスの選び方で解説しています。
判断に迷ったら複数の選択肢を並べて比較する
空き家バンクと不動産屋のどちらか一方に絞る必要はありません。売却したい空き家の価格帯、立地、状態、所有者の時間的制約によって、最適なルートは異なります。空き家バンク登録と不動産会社への査定依頼を同時に進め、それぞれの条件を比較してから判断するのが、結果的に早く、納得感のある取引につながります。
空き家の売却方法そのものを比較したい場合は、空き家売却の方法と流れで仲介・買取・更地売却の違いを整理しています。
よくある質問
空き家バンクを利用すると仲介手数料は無料になりますか。
空き家バンクは自治体が運営する情報マッチングの仕組みであり、仲介行為は行いません。売主と買主が直接取引する場合は仲介手数料が不要です。ただし、自治体が地元の不動産会社への仲介を勧めるケースや、契約手続きの安全のために不動産会社を利用する場合は、通常どおり仲介手数料が発生します。
空き家バンクに登録してもなかなか買主が見つかりません。どうすればよいですか。
空き家バンクだけでは閲覧者が限られるため、地元の不動産会社にも一般媒介契約で売出し依頼をして露出を増やすのが効果的です。登録情報に写真が少ない、価格が相場から外れている、残置物が多く内覧しにくいといった要因があれば、先にそれを改善すると反応が変わりやすいです。
空き家バンクの物件を購入するとき、住宅ローンは使えますか。
住宅ローンの利用は可能ですが、金融機関によっては空き家バンク経由の直接取引に対して審査が厳しくなることがあります。多くの金融機関は不動産会社が作成した重要事項説明書を審査書類として求めるため、空き家バンク物件でも不動産会社を仲介に入れるか、買主自身で必要書類を準備する必要があります。築古物件は担保評価が低く、借入額が制限されることもあるため、事前審査を早めに進めてください。
空き家バンクと不動産屋を同時に使うことはできますか。
同時に利用できます。不動産会社と一般媒介契約を結んでいれば、空き家バンクへの登録に制限はありません。専属専任媒介や専任媒介契約を結んでいる場合は、空き家バンク経由の買主との取引でも不動産会社を通す必要があるため、契約内容を確認してください。
不動産屋に払う仲介手数料はいくらくらいになりますか。
宅地建物取引業法では、売買価格が400万円を超える場合の仲介手数料の上限を「売買価格×3%+6万円(別途消費税)」と定めています。500万円の物件なら約23万円、800万円の物件なら約33万円が上限の目安です。この手数料は売主と買主の双方に発生します。空き家バンクで売主と買主が直接取引する場合は、この手数料を抑えられますが、重要事項説明や契約書作成といった取引の安全を守る業務も自分たちで対応することになる点に注意してください。
空き家を放置していると税金が高くなると聞きました。本当ですか。
空家等対策の推進に関する特別措置法に基づき、倒壊などの危険がある特定空家や、放置すれば特定空家になりかねない管理不全空家に指定され、自治体の勧告を受けると、住宅用地に適用される固定資産税の軽減特例が解除されることがあります。その場合は固定資産税の負担が増えるため、空き家を持て余している場合は早めに売却や活用、適切な管理を検討するのが安全です。